波乗りクリニック

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「依存症」を理解する<その5>~“依存”と“依存症”~

約 1 分

インターネット依存 依存にもいろいろあります。大きく分けると「物質依存」と「行為依存」ということになります。前者の代表がアルコールやニコチン(タバコ)で、後者は最近注目されているインターネット依存・ネットゲーム依存です。ワーカホリック(仕事依存)も後者に分類されます。

 さて、ここまであまり区別せずに「依存」と「依存症」という言葉を使ってきましたが、本当はこの二つは使い分けが必要です。

 おおざっぱなとらえ方をすると、「依存」の場合はそれが習慣化しているのだけれど概ね有益な場合を指し、「依存症」の場合はそれで有害なことが多くなる状態を指します。(神経生理学的には「ドパミンの作用部位が違うのではないか?」との説もあるらしいのですが、難しいので今回はちょっと横に置いておきます)

 一番研究されているアルコールを例にとると、「毎晩習慣的に飲酒をするけれど、だれにも迷惑をかけず、それが仕事や生活の励みになっている場合」は「アルコール依存」状態です。適度なアルコールは人間関係を円滑に進め、仕事や家庭にいい方向に働くこともありますが、「依存症」に進行するリスクが大きくなります。

 一方で、毎晩飲み過ぎて翌日の仕事に支障が出たり、少量の飲酒でも異常酩酊(病的酪酊と複雑酩酊に分けられます)を繰り返すと、人間関係を破壊したり、体を痛めたりといった問題が出てきます。この状態は自分と周囲を害しているので「アルコール依存症」です。正確には一度だけの異常酩酊では「依存症」とは言いがたいのですが、ほとんどの人は同じ問題を繰り返し起こします。また、飲酒運転で逮捕される人は、そのほとんどがアルコール依存症です。

 「依存」は趣味の領域、「依存症」は病的状態ととらえるのも一つでしょう。

 現在、「アルコール依存」状態(依存症予備軍)は全国に約440万人、「アルコール依存症」患者は約80万人、そのうち治療までたどり着くことが出来る人は約4万人と推定されています。

 統計によってばらつきがありますが、アルコール依存症専門施設での「回復率」は1~3割といわれています。あいだをとって2割の人が回復すると考えれば、およそ8千人がアルコールと縁が切れて回復者、「サバイバー」に成ることが出来ます。単純計算すると80万人の「依存症患者」のうち、現時点では約1%しか回復できない事を示しています。
 実際、アルコール依存症専門病院にたどり着いたときには心身共にぼろぼろで、社会的な信用も失っていることが少なくありません。「依存症は否認の病」とはよく言ったものですが、この否認がなくなれば早期の受診率が上がり、生存者も増えることになります。「依存症」がほかの病気と違う、やっかいな点です。

 最近はインターネット依存症なども問題化していますが、社会全体がインターネットに依存する構造になっていますので、その「依存」した人々から「依存症」になる人たちがいても不思議はありません。日本でカジノが解禁されれば、楽しみのレベルを超えて、ギャンブル依存症が増えることは容易に想像がつきます。

 人間誰しも、なにかに依存して生きています。家族だったり仕事だったり、いろいろです。しかしどんなもので上手に「依存」で踏みとどまり、そのあと「依存症」にならないように注意が必要です。