波乗りクリニック

一般内科・心療内科・在宅医療

新聞配達

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新聞配達 朝夕の冷え込みがきつくなってきました。出勤時に車のエンジンをかけると外気温は4℃を下回り、警告音が鳴ります。これから2月くらいまでの寒い時期が私の活動期です。枕草子の有名な「冬はつとめて(冬の醍醐味は早朝にある:小早川私訳)」に、私は共感を覚えます。文字通り、冬は朝早く起きて冷気を浴びます。そうすると生きている実感がわいてくるのです。ちなみに夏も好きですが、それは遊ぶのに適しているからで、6月~9月は暑くて頭が動かず、仕事にならないので割り切って無理せず過ごします。

 ところで、時代はネット全盛ですが、私はそれと逆行するように紙媒体での情報収集が多くなってきました。とくに朝刊は日々の楽しみの一つです。以前は子供たちが新聞をとる役目をしていましたが、最近は子供が起きてくるのが待ちきれず、自分で回収します。

 新聞といえば、もう30年も前になりますが、中学一年生の時、知り合いに頼み込んで新聞配達のアルバイトをしたことがあります。ちょうど12月~2月の寒い時期で、朝3時に起きて販売店まで自転車で通いました。

 製鉄所の方角は深夜でも明るく、常に「ごぉー」「ふぁー」という音が響いていました。明るい街に、それ以外の物音や動くものはなく、SF少年だった私は世界を独り占めしたような、まるでパラレルワールドに迷い込んだような、不思議な気分にひたることもできました。

 さて、販売店に着くと、すでに大人たちは広告の折り込み作業に入っています。自分の配達枚数を確認し、自転車に乗って出発です。私の主な受け持ちは製鉄所の社宅で、同じ形をした4階建てのアパートが何棟も立ち並んでいることろでした。入り口で自転車を止め、一気に最上階まで駆け上がり、配りながら下りてきます。それを何度も繰り返し、途中で友人数人の郵便受けにも入れ、「あいつらはまだ寝てるんだろうな」などど、昼間の友人たちの顔を思い浮かべていました。
 配達を終え、販売店に戻ると店主が熱い缶コーヒーを手渡してくれます。ひと仕事終えた後の甘い缶コーヒーはまた格別でした。自宅に帰って一時間ほど仮眠をとり、父の焼いてくれたトーストをほおばって登校です。
 朝礼前に、新聞を配った家の友人たちに会いますが、そのことは言いません。「○○の父さんが今朝読んだ新聞は、僕が配ったんだ!」と言ってみたいのですが、なにしろ学校には内緒でアルバイトをしていましたので、とうとう言えずじまいでした。
 事情があり、数ヶ月でやめざるを得なくなりましたが、私にとってはいい経験でした。冬の早朝が好きになったのはその頃からかもしれません。実はそのアルバイトで、様々な人に迷惑をかけることになったのですが、それはまた別の話…。(いずれ機会があれば…ですね)

 いまでも毎朝新聞を見ると、「配達してくれたのはどんな人なのか」、「印刷所から販売店にどのように運ばれたのか」と郷愁を交えて思いをはせます。

 ちなみに現在は労働基準法により、15歳以下の深夜労働は認められていません。労働の尊さを学ばせるため、「子供たちにも経験させたい」と思うのですが、現代では難しいようです。
 もっとも、「教育にノスタルジーは厳禁」という不文律がありますので、それはそれで良いのかもしれません。昔を懐かしんで子供に強要することもないでしょう。学生の本分は学業です。まずは学校の勉強に「しっかり」取り組んでほしいものです。