波乗りクリニック

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「かぜの科学」 もっとも身近な病の生態 ジェニファー・アッカーマン

約 1 分

かぜの科学「病気の原因を外界に求めるのはよそうではないか、なぜならそれは我々の中にあるからだ」
(セネカ)

そういうわけで、今日は最も身近な病気「かぜ」についての話です。

 まずは、「かぜ」という平凡かつ巨大なものをテーマにした著者に拍手を送りたいところです。山とある俗信や風邪薬のエピソードを取り混ぜ、基本的にはやんわりと、時には鋭く科学のメスを入れ、一気に読ませます。
 なお、かぜの定義自体が混乱を招くため、この本では主にライノウイルスによる上気道炎に的を絞って書かれており、いわゆる「腸のかぜ・下痢」等は対象としていません。つまり、いかにウイルス性上気道炎を防ぐか、治療するか(あるいはしないか)、に焦点を当てて書かれています。
内容をまとめるとだいたい以下のようです。

  • ライノウイルスは人の手から手へ移動する
  • 9割が鼻から、時には目からウイルスは人体に侵入し、口にはほとんどいない
  • 鼻の温度33℃前後がウイルス増殖に適している
  • 寒さと感染の因果関係はない、むしろ密閉された暖かい環境が風邪を蔓延させる
  • 免疫力の低下とかぜは関係がない、むしろ免疫力があるから咽頭痛・鼻水・咳が出る
  • かぜに限ってはマスクの有効性は低い
  • 予防には手洗いが一番有効だが、強迫的になるのも良くない
  • 総合感冒薬よりも、身近な人に優しく看病してもらう方が早く治る
  • たまには風邪を引き、ゆっくり休むのも悪くない
  • 人類はウイルスと共存しており、DNAの8%は何らかのウイルス由来である

元データ・エビデンスもしっかり記載されており、ひとつひとつの挿話もおもしろく、あっという間に読んでしまいます。
これは一読の価値がありますので、ぜひ手にとって読んでみてください。

手洗いはウイルスの移動を防止し、流行を防ぐにはもっとも有効です。
しかし、どんなに手を洗っても完全な「無ウイルス状態」にはできないので、
個人の感染防止のために、何より大事なのは「顔を触らない」ことです。
特に鼻周囲は大事で、けっして鼻くそをほじくってはいけません。
目もこすってはいけません。
しかし、そう意識すればするほど、鼻や顔がむずむずしてきて、かえって触りたくなります。

マスクについては、保温・保湿効果、感染対策を意識する効果、マナー上の効果(他者を気遣う優しさ)はあります。しかし、ウイルスはマスクの編み目よりはるかに小さいので、やすやすと通り抜け、感染が成立します。(N95規格は別でしょうが、30分くらいしか連続使用できないようです)

ただし、ウイルス以外の理由でマスクが義務づけられている場合、粉じん対策や飛まつ感染対策はこれに該当しませんので、その指示に従った方がいいでしょう。
マスクを使う際の注意としては

  1. マスク装着時、中央部分には手を触れない。
  2. 一度装着したら、外して捨てるまで二度と触らない。(逆に言うと、触ってしまったマスクは捨てた方が良い)
  3. 口だけマスク(鼻が出ている状態)では、マスクの意味がない。(さらに、「あごマスク」は最悪で、感染のリスクを高める)

といったところでしょうか。

しかし、いずれも感染確率を下げるのには役立ちますが、一生かぜと無縁でいるのは難しそうです。
洗い立ての洋服や枕カバーも細菌やウイルスはうようよしていますし、寝ている間に顔や鼻を触ってしまうのを防ぐことはできません。
無症状の人の鼻腔にもウイルスは住み着いています。

強迫的にならず、ほどほどの手洗いを心がけ、それでも風邪を引いたときは、
誰かに甘えてゆっくり休息をとるのが良いかと思います。
それぞれの家に代々伝わる治療法を試してみるのも悪く はないでしょう。(大事なのは家族の絆ですよ)

子供が風邪をひくと親は大変です。しかしそこを乗り越え、子供をだっこして看病することで、
「無意識のうちに愛着が形成され、親子の絆が深まるのではないか」
との仮説を私は持っています。

余談ですが、以前に「人は嘘をつくとき、無意識に鼻を触る」と聞いたことがあります。
だとすると、しょっちゅう風邪を引いている人は…。
(悪い冗談ですよ!データの出所や真偽は不明です。)