波乗りクリニック

一般内科・心療内科・在宅医療

「生命保護」と「個人情報保護」

約 1 分
診察室での個人情報
診察室での個人情報

 通常のメディアやネット新聞から遠ざかって久しいのですが、昨日、久しぶりに新聞を広げてみると、茨城の水害と個人情報保護のことで問題が持ち上がっているようですね。なんでも「行方不明者の個人情報保護を優先したため、安否確認が後手後手に回った」ことを叩かれているようです。

 私たちも他人事ではなく、医療の現場でも「生命保護」と「個人情報保護」のどちらを優先するのか、非常事態の時には常に悩む問題です。

 定期往診の日に、独居の人が自宅にいないと、「どこかに徘徊して事故に遭っているのかも」と無用な心配をして、勝手に遠方の家族に連絡を取ったりします。結果、ただ近所に買い物に行っているだけだったり、庭仕事をしているだけだったりして、医療者が安心したいがための行き過ぎた心配が、仕事中の家族を巻き込んだ騒動に発展することもあります。

 マニュアルの見直しや、エビデンスの集積も大事だと思うのですが、ここ一番ではやはり「経験」がものを言うような気がします。「現場の勘」とでもいいますか…。

 さて、今日も経験を積むために頑張って仕事に励みましょう。

——産経新聞 9月16日(水)から抜粋——

『東日本豪雨 行き過ぎた個人情報保護 茨城県常総市』

 茨城県常総市がこれまで15人としてきた行方不明者をめぐっては、不明者リストを公表すれば本人や家族などが名乗り出て早く確認できたとの指摘が出ている。しかし、同市は「個人情報保護の観点」(高杉徹市長)から未公表を貫いてきた。防災の専門家からは「明らかに行き過ぎ」と過剰な情報保護に疑問の声も上がっている。

 ■安否確認進まず

 常総市は「連絡不通者」として連絡が取れない市民の数を公表してきたが、12日午前9時に「15人」として以降、3日間は安否確認が全く進まなかった。その後、茨城県が14日午後7時までに15人中13人の無事を確認するとともに、1人は実在しない人物で虚偽通報だったことも確認。15日午前にはこうした内容が常総市に伝えられた。さらに、県は15日正午に残る1人の無事も確認した。

 14人はどこにいたのか。県によると、最後に確認できた1人は同市内の避難所にいたことが判明したというが、残る13人については明らかにしていない。行方不明者のリスト公表を求める声もあったが、高杉市長は15日の会見で、「個人の人格を尊重する」と公表見送りの理由を述べた。

 ■例外的に公表可能

 災害時でも個人情報保護法は有効なのか。同法23条は「生命、身体または財産の保護のために必要な場合」として例外規定を設け、急病や火災、天災など緊急に情報提供が必要な場合は例外的に本人同意を得ずに個人データを提供できるとしている。

 広域首都圏防災研究センター長を務める群馬大学大学院の片田敏孝教授(災害情報学)は「ここまで安否確認に時間がかかり、結果的に全員無事という例は聞いたことがない。それほど混乱していたのだろう」と推測。その上で、個人情報保護を理由に不明者リストを公表しなかった市の対応について、「人の命を守る局面で、プライバシーを優先するのは本末転倒。何が最優先か考え直すべきだ」と指摘している。

 市内で避難生活を送る同市中妻町の主婦(66)は「氏名を公表すれば安否がすぐに分かったかもしれない。命にかかわることだから、名前を出して確認してほしかった」と話す。(市岡豊大、緒方優子)