
先週、救急当直の時にマダニ咬傷を見ました。幸い、一緒に当直していた研修医が、異様なまでにマダニ咬傷に詳しく、てきぱきと処理してくれました。 (よっ、マダニ博士!)
やはり、最近の研修医は優秀ですね。勉強熱心です。
肝心の処置ですが、マダニを無理に引っ張らず、まずアルコール綿で10分ほどマダニを包み込み、窒息(?)させます。その後、マダニの頭が残らないようにピンセットでゆっくりとはがしていくのですが、最後のところでどうしても頭が抜けません。しかたなく局所麻酔して一部の皮膚ごと切除しようと、相談していたとき、「ぽろり」とマダニが外れました。
捕まえたマダニは、万が一に備えて冷凍保存処理を行います。
さて、マダニが媒介する病気としては、以前から日本紅斑熱、Q熱などがあり、最近では「重傷熱性血小板減少症候群」(SFTS)が注目されています。
SFTSは2013年5月に、山口県で最初に患者が発生したウイルス感染症で、マダニが媒介する病気と言われています。
マダニ咬傷後、1~2週間の潜伏の後に高熱や消化器症状で発症し、重篤化すると死亡することもあります。
ダニにかまれたからといってすぐに感染するわけではなく、滅多に起こらない珍しい病気ですが、出来るだけマダニに関わらない方がいいでしょう。

マダニは、家ダニとは違って屋内にいることは滅多になく、主に森林や草地、動物の通り道などに生息しています。
草刈りなどするときは、どんなに暑くても、しっかりと防御するような服装が良いでしょう。もちろん熱中症対策もお忘れなく。
そして、もしも咬まれてしまったら、自分で処理せず、そのまますぐに医療機関を受診して下さい。一度食いついたマダニは簡単にははがれず、場合によっては10日近くも「人の生き血を吸い続け」ます。その場合には元の体積の100倍くらいまで膨らむと言われています。感染のリスクも増大します。