波乗りクリニック

一般内科・心療内科・在宅医療

感染症としてのニコチン依存

約 1 分

子供に絶対吸わせない ニコチン依存症は伝染します。世代を超えて親から子、孫へと感染が広がります。(垂直感染)
 また、夫婦や職場の同僚にも感染します。(水平感染)

 伝染病には予防が一番です。子供に吸わせないことです。そのためにはまず大人が手本を示さなくてはなりません。

 誤解して欲しくないのは、ニコチン依存になった人は、なりたくてなったのではないと言うことです。「ニコチン依存症の8割は禁煙したいと思っている」というデータが示しているように、ニコチンを吸いたくて吸っているわけではないのです。依存の強さは覚醒剤やアルコール、合成麻薬のMADAより遙かに上で、さすがにヘロインには負けますが、乱用される薬物の中でもトップクラスです。

 たばこを吸う人はその臭いと不潔なイメージで嫌われてしまいます。しかし、そのことがかえって物事の本質を見えにくくし、ニコチン依存症の治療を妨げています。実際、たばこを吸う人にはいい人も多いのです。むしろお人好しで、人の頼みや誘いを断れない人が多いように思います。
 才能豊かでクリエイティブな人も多い(作家など)のですが、どうしても寿命が10年以上短くなるため、結果的には残せる作品も少なくなります。
(私が尊敬する呼吸器科のドクターでヘビースモーカーの人がいます。「わかっちゃいるけどやめられない」と悲しげに話します。恐ろしいことです。)

 初めてのたばこは実に不味い物です。しかし小さい頃からタバコの煙に被爆し、ニコチンにさらされた子供はすでに依存になりかけていますので、一服目から割合と抵抗がないようです。一本目をうまいと感じるか、不味いと感じてやめてしまうか、はたまた不味いことを我慢して背伸びして吸い続ける努力をするかで、その後の人生がかわってきます。

 私も喘息の持病があったにもかかわらず、また、小学生の時は喫煙する大人を憎んでいたにもかかわらず、中学生の時に一本吸いました。なぜ吸ったのかは今となってはよく覚えていません。反抗心か、背伸びしたい気持ちなのか…。
 とにかく私は一服吸って「不味い」と思いました。また、我慢して吸い続ける努力を怠ったため喫煙者になりませんでした。このときに吸い続けていたら、おそらく今はヘビースモーカーになっているか、さもなくば途中で体を壊していたでしょう。

 ともかく、吸い始めるとその依存性のため、やめるのが難しくなります。よく言われる「意志の強さ」は依存症とほとんど関係ありません。学歴や人格とも関係ありません。また、自己流の禁煙方法では1割くらいの人しか成功しません。
 ですから「最初から吸わない」、「生涯一本も吸わない」ことが大事です。

 そのために大事なのは子供に吸わせないことです。周りが吸っていると、子供はタバコの煙に被爆し、感染します。
もしもあなたがタバコに強い体質で、「60-70才になっても元気だから」という理由で吸い続けるのならば、それはそれでいいと思います。
しかし、周囲の人がそれだけ頑丈であるとは限りません。感染を広げないように子供や孫は保護した方がいいでしょう。

 また、「やめたいけれど依存が強くてやめられない」という気の毒な被害者も大勢(喫煙者の8割)います。これを救うのが現代医学の責任かもしれません。いまは身体的依存を軽減するための治療法も進歩していますので、早めに治療をお勧めします。しかしそれを持ってしても治癒率は50%という成績です。吸い始めなければ苦しむことはありませんので、やはり子供達を守らなくてはなりません。

 感染症治療の基本はまず「予防」、次に「早期発見・早期治療」です。ニコチン依存症の早期発見は自己診断で100%可能なので、あとは早期治療、とにかく一刻も早く治療を始めることです。

治療者の基本は

1.依存症患者を毛嫌いしないこと(人格の問題ととらえないこと)
2.幇助しないこと(喫煙の手助けをしないこと)

だと考えています。このあたりの構造はアルコール依存症の治療と同じです。

また、禁煙に成功した人は元々の非喫煙者よりも社会的に成功する人が多い(相対的に多い)とも言われています。
ですから、今吸っている人は禁煙する理由として「社会的成功者になりたいから」といえば喫煙仲間の輪から抜け出せるかもしれません。

本題に戻りますが、最も効率的で最優先すべきことは「子供に吸わせないこと」です。
それに関してはとても良い教科書があります。理論武装することは重要です。

「子どもにゼッタイ吸わせない禁煙セラピー」(アレン・カー著)
これは読みやすく、よいポイントを突いています。タバコ2箱分の価格です。

子供の幸せを願うならば、良い環境を作ってやりたいものです。